シマノ鈴鹿 個人TT初出場で優勝!チームTT5位!その3
※かなり長いです。
招集場所に並ぶTTバイクを見て、パゴスが「やっぱりここまでくるとみんなTTバイクやな」と言っていた。みんなフル装備だし、速そうな人ばかりだな...
自分なんか苦し紛れにピンクのスイムキャップかぶせてエアロヘルメットもどきにしてるし、場違い感しかないw
サンコーさんの「速い人には機材なんか関係ないんすよ」という言葉を思い出し、心を落ち着かせる。自分がその”速い人”にカテゴライズされているかどうかは知らんがw
気付くと、隣のバニラさんがスライスに乗っている方(ブルーさんではない)と話していた。その方は先週のAACA第8戦TTに出ていたそうで、2分前にスタートしたのにポール星人に抜かれそうになったとか。
あたりを見渡すと、1台異様な自転車を発見した。なんと、リカンベント!?
凄すぎる… 平坦ならロードより速いが、予選のコースは登りと下りしかない。とんでもない人がいるんだなぁ。しかも予選順位top5に入っている。一人異質な空気を纏っていた。話しかけたかったがオーラが違いすぎて話しかけられなかった。
しかし、じっとしていると緊張してきそうで、とにかく周りの人と話したい。
近くにいた借り物TTバイクで参戦しているという人と話していると、ついにブルーさん登場!体調を聞いてみたが、そこまで悪くなさそう。しかし、ベストコンディションではないのかな?昼間は2周の部に参戦したもののあまり良い結果ではなかったそうだ。
それからしばらく夕暮れ時の空を眺めていると、かなり硬い表情でドグマに乗った方が来た。ロードバイクでの参戦は見渡す限りドグマさんと自分のみ。
「みんなガチなTTバイクで緊張してきますね~」と話しかけてみたが、ドグマさんは自分以上に緊張している様子。大丈夫かなぁ。ロードとはいえ、リアはディスクを装備していた。
スタートの時間が近づき、スタッフの指示に従って予選タイム順に並ぶ。スタッフが自分のヘルメットを見て笑った気がしたけど気のせいだろう。
タイム順なので、予選TOP5の方々と話しながらスタートを待つ。
5位はバニラさん。鷹組TTの常連だ。風が強かったためフロントをデュラエースのC35に変更したようだが、決勝開始前には風が穏やかになっていた。それでも多少横風に煽られそうな区間はあるから、この判断が良いか悪いかは走ってみないと分からない。
4位はリカンベントのSさん。かっこよすぎる。(構造上)登りとコーナリングが苦手だからシケインで詰まってたらうまく抜いてください、と言っていた。まあ、自分は40秒後スタートだからゴールまで追いつくことはないだろう。
3位はデストラのKさん。競輪選手のような横にデカい体型で短距離型のように見える。5年ほど前までは個人TTに出ていたが、ここ数年は5ステージに参戦していたようだ。しかし、5ステージでの個人TTは2.2kmと短いため、フルコース5.8kmのTTがしたくて今年はこちらに参戦したらしい。
2位はポール星人。変なヘルメットかぶってる。シマノ鈴鹿初参戦。
そして予選1位は大垣ピストンズのTさん。何年間もロードでシマノ鈴鹿個人TTに挑んでいたが予選突破できず、今年はTTバイクを導入して予選通過したらしい。「ロードで予選通過はすごいよ」と褒められてしまった。バッファローマンさんと秋鈴鹿トロバラ出るのでよろしくお願いします、と挨拶しておく。
top10まで見ると、6位に最年少のMさん、7位に大阪から参戦のキャノンデール心斎橋Mさん、8位にAACA上位常連のデストラYさん、9位にブルーさん、10位に昨年も上位に入っていたイナーメのWさんがいた。決勝は距離が長くなるから、予選順位が逆転する可能性はじゅうぶんある。
そして予選20位から順に20秒間隔でスタートしていく。
風は弱まり、気温も程よく下がり、気持ちの良い夕暮れ。
TT選手にしては軽量級(62~63kg)で風に弱く、暑さにも弱いポール星人にとって最高のコンディションだった。
予選5位のバニラさんがスタートするときは後ろから応援する。
4位のSさんもリカンベントでスタート。
3位のデストラKさんは迫力あるダンシングで加速していき、ついにポール星人スタート20秒前。
緊張感は無かった。
目の前のまっさらなホームストレートと薄暗い夕暮れ。
これを目指して3か月やってきたんだなぁ、と思う。
そしてカウントが0になり、しっかり下を見て確実にクリートキャッチ。
軽めの52-18を気持ちよく踏みしめてスタート。
37~38km/hまで加速して腰を下ろし、シフトアップしてからTTポジションをとる。ハンドル周りはDHバーを付けただけだから、変速がブラケットなのはやや不便。
前にデストラKさんが見える。ピンクで遠目からでも目立ち、良い目標になりそうだ。ゴールまでに捕らえられれば予選3位の選手に20秒差をつけたことになり、優勝の目安になるだろう。
スタート直後から雑念が多く、細かいフォームを気にする余裕がなかった。いろいろ考えて準備してきたにもかかわらず、かなり崩れていた気がする。しかし、42km/h程度で気持ちよく巡行。最初から無理をするとシケインで死ぬのが目に見えている。最初は少し抑えていこう。
シケイン前で斜度が急になるところでカメラを構えている人がいた。もっとガチな装備の人を撮ったほうが様になると思うけどなぁw
MSR HBさんに撮って頂きました。ありがとうございます。
この写真がシケイン前かどうかはわからないけれど...
シケイン前からはダンシングでリズムよく上がっていく。30km/hくらいだったかな?ここは無理するところじゃない。それなりの強度でいく。
裏ストレートに入り、下り基調を45km/hくらい。昼間から風向きが変わった影響か、速度が乗りにくくなった印象。そのおかげで早くも心が折れかける。
まだ始まったばかりなのに、「もう順位とかどうでもよくね?つらいの嫌だし。」「そもそも、決勝はサイクリングの予定じゃなかったっけ?」など心の声が聞こえる。
メンタルぐちゃぐちゃでスプーンへの下り。ここでも50km/h程度しか出ず、嫌になってくる。後から考えれば風向きの変化だと思うんだけど、その時はそんなこと考える余裕なかった。アップ不足特有の息苦しさがあり、アップに関しても反省。アップで脚が重くて心拍上げきってなかったのが原因。
スプーンの登りはもうヨレヨレ。かなり遅くて自分が嫌になる。普段から常に心掛けている「かっこいい走り」ができていない。
そんな感じで登り切って第一計測ポイント通過。
後から知ったが、この時点でトップタイムを記録していたブルーさんを上回り、暫定1位になっていたらしい。自分の体感からすれば「そんなばかな」といった感覚だが、脚質も機材も有利な区間だったのかな。自分以外のほとんどの選手はTTバイクにディスクホイール装備でかなり重たいが、自分はノーマルバイクにリアも80mmディープリムのため、機材が軽くて登りが多いこの区間では有利だったのかもしれない。それに加え、自分は緩やかな登りがかなり得意で、知らず知らずのうちに差をつけていたのかな。
そのあとはヘアピンカーブに向けて踏みなおす。心臓が慣れてきて、少し頑張れるようになってきた。この区間はかなりケイデンスが高く、110rpmくらい回していた気がする。後になって思ったが、せいぜい7~8分のレースで乳酸の蓄積におびえるのは意味がないだろう。脚が動かなくなるのが怖くて、いつもレースでは重いギアを踏めない。思い切って1枚重くして踏んでいく勇気を持とう。
ヘアピン前では、前方にデストラKさんが見えた。差は10秒程度に縮まっている。コーナリングが苦手なポール星人だったが、Kさんのラインをトレースしていい感じに曲がっていく。
デグナーもDHバーを握って通過。ここをTTポジションで駆け抜けるのが最高に気持ちいい。
そして最後の難関S字カーブの下りへ。
ディスクを装備していない自分にとって、ここが一番遅れを取りやすい区間。
攻めていかなければならないが、微妙に横や斜めから風が吹き、難しいコンディション。風はそれほど強くないが、今日初めて使うホイールだし、まだ下りでの全開走行に慣れていない。
頑張って脚を回して姿勢を低くし、体を傾けてコーナーをクリアしていく。それでも前方のKさんとの差は縮まらない。引き離されないよう、何とかこらえてS字を抜けた。
Kさんは射程圏内にいる。
最後の第1コーナーを抜けてゴールは目の前。
ホームストレートとゴールラインが見えてきた。ここで残り300mくらいだが、やっと気づく。
”脚を残しすぎている”
今日最後のレース、もう温存する必要はない。
完全にリミッターを解除して大腿四頭筋を全力で収縮させた。
みるみるKさんが近づく。ドラフティングを疑われると困るので、大きくラインを変えてさらに踏み込む。
更に加速して47~48km/hでKさんに並ぶ。
左からカーリーの声援が聞こえる。
視界がゆがみながらも力を振り絞って踏み、Kさんをパスして50km/hでゴールラインを通過。
静寂。
アナウンスに耳を傾ける。トップタイム更新なるか...?
「出ました!1番時計!鷹組...」
まで聞いて拳を握り、吠えた。
まっさらなホームストレートに4,5回くらい咆哮し、ゆっくりとピットロードに入る。
その頃、最終出走 大垣ピストンズTさんの記録が確定し、再度アナウンスがあった。
「優勝は鷹組...」
まで聞いて再度軽く吠えて最初の招集場所に戻る。
全く実感がないが、とにかく勝ったらしい。
タイムは7分37秒99、平均速度45.59km/h
招集場所でブルーさんに
「負けたよ」
と言われ、握手しながら「この人には勝てないな」とぼんやり思った。
その時は何ともなかったが、今この場面を思い出すと涙が出そうになる。
自分が練習再開して3か月で強くなれたのはブルーさんのおかげだし、速い人に食らいつくのが何より良い練習になる。もちろんそれだけではダメなのだけど。
研究や講義課題などでコンスタントに朝練行けたわけではないけれど、近くにすごい人がいると思うと、しばらく乗れないときにも気持ちが切れなかった。
2位のブルーさんとはたった3秒差。ブルーさんの体調が万全なら確実に負けていた。
結局、事前のイメージとは逆になったけれど、ブルーさんと二人で表彰台に立つことができた。
3位はAACA常連のデストラYさん。やはり長い距離になると強い。「AACA第9戦TT行くのでまたよろしくお願いします」と挨拶しておいた(実は前日12時にエントリー開始した直後、速攻で申し込みました)。
表彰式までの間は、YさんとTTについていろいろ話したり、3人で飲み放題のアクエリアス飲んだりして過ごした。
1位にはインタビューみたいなものがあるらしく、その内容をどうするか聞かれて非常に困った。プロでもないのにそんなことされても...
いくつか提案されたパターンのうち、「練習相手について」を選んでおいた。
隣にいるので、ブルーさんについてなら話しやすいし。
何とか表彰とインタビューを終え、最後に記念撮影。
カーリー撮影。
これでやっと表彰式が終わった。ほっとした。
実はステージに上がった時から大学のサイクリング部の方々が来てくれていることに気付いていて、表彰式後、少しだけご挨拶。
チームオフィス片付けの時間が押していてあまり話せずすみませんでした。
バニラさんもかなり待たせてしまって申し訳ありませんでした。
そのあとはパゴスと二人で花火の音を聞きながら車まで荷物を運び、積み込んで帰宅。
家に帰ると鷹組LINEが盛り上がっていて、うれしかった。